貞シキヿ甚シ、甲斐ノ民之ヲ開キ、相告テ曰ク、吾
儕ノ今日アルハ、実ニ小島君ノタマモノナリ、今
右鯨ニシテ日、貧シト聞ク、豈黙止スベケンヤト、
唱シ百和ス、乃三人ヲ択ビ、衆ニ代リテ、百金ヨ
癒シ、江戸ニ来リ、贈ラシム、夷嘆シテ曰ク、輓近ノ
清倫薄ニ趨ル、甲州ノ民独リ厚情此ノ如シ、以テ
吾母ノ心ヲ慰スヘシ、但￣メ之ヲ受レバ、廉ヲ破ルマ
一人ヲ饗シ、之ヲ喩シテ曰ク、子等ノ厚意吾深
ヲ感謝ス、然リト雖、吾レ金ヲ受ルノ理ナシ
拒ンデ受ケス。
波島
履ヲ
取ル
漢ノ張良◦嘗テ下那ノ地上ニ遊ブ、一老父アリ良
ル所ニ至リ、其￣ノ履ヲ橋下ニオトス、顧テ良ニ謂
如ク、繻子下リテ履ヲ取リ来レ、良愕然其￣ノ老タリ
カ為メニ、乃￣チ下リテ履ヲ取リ、跪ヒテ進ム、老父早
ヲ以テ之ヲ受ク、良大ニ驚ク、老父去ルヿ里許復
還テ曰ク、繻子教ユベシ、後五日平明我ト此ニ期
ハ、良曰ク、諾、五日平明ニ往ク、老父已ニ先ヅ在リ
忘テ曰ク、老人ト期シテ、後ルヽハ何ゾヤ去レ、後
五日早ク会セヨ、良鶏鳴ニ往ク、老父又先ツ在リ